メダカは日本の環境変化を映し出す生きた鏡のような存在です。かつて全国の田んぼや小川、池沼に当たり前のようにいたメダカが、今では絶滅危惧種として環境省のレッドリストに掲載されています。
野生のメダカが激減した主な原因は、戦後の急速な開発と農業の近代化にあります。コンクリートで護岸された河川、農薬の使用、外来魚の放流、都市化による水辺の消失など、様々な要因が重なってメダカの生息環境を奪いました。
興味深いことに、野生のメダカが姿を消す一方で、観賞用の改良メダカは大きな人気を集めています。皮肉にも、自然界から消えつつあるメダカが人工的な環境で繁栄しているのです。
しかし、これらの改良品種と野生のメダカは遺伝的に大きく異なっており、改良メダカの普及が逆に野生個体群の遺伝的多様性を脅かす可能性も指摘されています。亀田養魚のような専門業者は、こうした問題を認識しながら責任ある繁殖と販売を心がけています。
メダカ保護の取り組みは全国各地で始まっています。学校のビオトープ作り、休耕田を活用した生息地復元、地域住民による水質調査など、市民レベルでの活動が広がっています。
メダカの分布調査から見えてくるのは、地域ごとの遺伝的多様性の豊かさです。日本各地のメダカは長い年月をかけてそれぞれの環境に適応し、微細な違いを持ちながら進化してきました。関東、関西、九州など地域によって体色や体型にわずかな違いがあり、これは日本列島の複雑な地史を反映しています。こうした地域個体群の保護は、日本の生物多様性保全にとって極めて重要な意味を持っています。
小さなメダカが教えてくれる環境の変化に耳を傾けることで、持続可能な未来への道筋が見えてくるはずです。私たちはメダカと共存できる環境を次世代に残していく責任があります。

